親が認知症になったらどうなる?その前にはじめる相続対策
2025.6.16
親が認知症になり判断能力が低下すると、財産の管理が難しくなるため、事前に対策を考えておく必要があります。
例えば、契約締結に関する適切な意思決定ができなくなったり、詐欺などの被害に遭いやすくなる、などの問題が起きる可能性があります。
実際に、不動産オーナーであるお母様(またはお父様)が認知症になられたご家族のほとんどは、お母様(またはお父様)が認知症になってから情報収集を始めることが多く、ご家族が「こんなはずじゃなかったのに・・・」と後悔されることも多いです。
今回は、親が認知症になった場合に起きる問題と、認知症になる前にご家族で相談して決めておくべき相続対策についてお伝えしていきます。ぜひご覧ください。
親が認知症になったときの相続と財産管理の問題
―相続の準備ができなくなる
認知症の方が遺言書を作成した場合、その遺言書が無効になる可能性があります。遺言書の有効性は、遺言者本人が遺言を作成する時点で意思能力があったかどうかに基づいて個別に判断されます。
特に、法定相続分とは異なる割合で相続させたい場合や、分割しづらい財産が遺産に含まれる場合は、希望通りの遺産分割ができないことがあります。
生前贈与も、財産を贈与する側(贈与者)と受け取る側(受贈者)の間で契約がを結ぶ必要があるため、贈与者に意思能力がなければ無効となります。その結果、生前贈与を利用した相続税の節税対策ができなくなってしまうのです。
―預貯金の引き出しができなくなる
親が認知症になると、ご家族が介護や日常生活のサポートを行うことが多くなりますよね。
例えば、食事の準備や家の掃除などの日常的なサポートに加えて、光熱費や生活費など金銭面の管理・サポートも家族が行うケースが大半です。
しかし、認知症の親に代わってご家族が金融機関で生活費を引き出すときに、窓口で事情を説明したことがきっかけとなり、口座が凍結されてしまうことがあります。
口座が凍結されると、生活費や介護費用、医療費を引き出すことができなくなってしまうため、金銭面で大きな問題が発生するケースもあります。
―不動産の売却が難しくなる
所有者である親が認知症で判断能力がない場合、売買契約は無効になることが法律で定められています。そのため、認知症の親の代わりにご家族が不動産の売却を行うこともできません。
ご家族が代理で不動産売却を進めたい場合、成年後見制度を利用すれば売買を行うことができますが、家庭裁判所の許可が必要になります。
こうなると、通常の不動産売買よりも時間と労力を要するため、手続きが大幅に遅れてしまいます。
認知症になる前にやっておくべき相続対策
―公正証書遺言を作成する
遺言書は、自分の財産を誰にどのようにき継ぐかを示す最終的な意思表示となります。ここで重要なのは「判断能力がある状態で作成されたかどうか」です。
親が認知症だった場合、「残された遺言書は有効なのか」相続人同士でトラブルになることも多く、裁判において実際に無効とされるケースもあります。そのため、確実性の高い【公正証書遺言】で作成することがおすすめです。
【公正証書遺言のメリット】
■公証人が遺言書を作成するので、法的に無効になりにく
■原本が公証役場に保管されるので、紛失や改ざんを防げる
■裁判所の検認手続きが不要で、スムーズに相続手続きができる
―家族信託を活用する
家族信託とは、親の財産の管理・処分を信頼できるご家族(受託者)に託す制度です。
認知症になると銀行口座が凍結されてしまったり、不動産の売却もできなくなりますが、家族信託を利用すると、ご家族が継続して財産管理できるようになります。
家族信託を行う際の注意点として、契約書は公正証書で作成したほうが効果的です。
自分たちで契約書を作成することもできますが、他の相続人が「契約の無効」を主張してくる恐れがあります。トラブルを防ぐためにも「契約した時点では判断能力があったこと」を主張できる公正証書で作成しておくと安心です。
―生前贈与をする
生前贈与とは、存命中にご家族に財産を譲り渡すことです。
生前贈与の特徴として、贈与者(財産をする方)は【いつ、誰に、どの財産を渡すか】を自分の意思で自由に決めることができます。
また、生前贈与を行うと、受贈者(贈与を受けた方)に贈与税がかかりますが、贈与税には年間110万円の基礎控除(非課税枠)がありますので、生前に少しずつ贈与することで、相続税対策にも効果的です。
―任意後見契約を結ぶ
任意後見制度とは、ご本人の判断能力が十分あるうちに、将来、認知症などで判断能力が低下したときに備えて、自分の財産管理や生活の支援をしてもうらう人をあらかじめ決めておく制度です。
認知症になったあとの財産管理をスムーズにするためにも「任意後見契約」 を結んでおくのは有効な手段です。
認知症高齢者数は今後も増加するとされていて、厚生労働省の発表によると2040年には584万人にのぼると予測されています。
後見人を事前に決めておくことで、成年後見制度のような裁判所の監督が不要になり、家族の負担も軽減することができます。
まとめ
今回ご紹介した通り、不動産オーナーであるお母様(またはお父様)が認知症になってからでは、遺言書の作成や財産管理が困難になります。
例えば、よくあるのは、
「一人暮らしの母親(または父親)が認知症を発症し、実家での介護が難しく介護施設への入居するため、入居費用を用意するために実家を売却したい」という相談が寄せられます。
ですが、認知症のご両親が所有する不動産を家族が代理で売買することは法的に認められません。
このようなリスクを避けるためにも、はやめに対策を講じることが重要です!
「まだ元気だからうちの両親がまさか認知症にはならないだろう…」とお考えの方も多いかと思いますが、認知症は誰にでも起こりうる可能性があります。
ご両親の財産を守るためにも、将来の相続について今から話し合いをしておくことが大切です◎
当社では、これから相続を控えている方のご相談も承っております。
専門家とともに相続税をシュミレーションしたり、遺言書で遺産分割方法を事前に決めて、できる限り相続問題や共有問題の防止に努めております。
家族信託や任意後見制度の手続きは複雑なため、専門家に相談することがおすすめです。
相続が発生する前に相談しておくと、後々トラブルになることも避けられますので、【相続・税務・不動産登記】など、専門家に少しでも話を聞いてみたいというお客様はお気軽にお問い合わせください。