【相談事例】認知症になると家は売却できない?
2025.12.25
親が認知症になると、財産の管理が難しくなるため、事前に対策を考えておく必要があります。中でも、不動産を所有している場合、本人の意思能力(判断力)が欠如していて「家を売る」という契約内容をしっかり理解できない状態では不動産の売却はできません。
実際に、不動産の所有者であるお父様(またはお母様)が認知症になられたご家族のほとんどは、お父様(またはお母様)が認知症になってから情報収集を始めることが多く、計画通りに物事が解決できず「こんなはずじゃなかったのに・・・」と後悔されることも多いです。
今回は、実際にあった相談事例を踏まえて、認知症になってしまった場合の売却方法と、その前にできる対策についてご紹介していきます。
不動産の売却相談
『高齢の父母が住んでいる一戸建てを売却して、私の近くのマンションに住み替えをさせたい』と、離れて暮らす娘さんから相談が舞い込んできました。
詳しく聞くと、高齢のお父様が自宅階段で足をふみはずし、骨折してしまったそうです。これをきっかけに娘さん夫婦が心配されて、両親が住んでいる一戸建ての売却と、困ったときに援助できるように自分たちの近所へ住み替えの話がでているとの事でした。
まずは査定から!
早速、ご自宅に査定に伺い、実際にお父様とお会いしてみると、なんかおかしい・・・。話はできるのですが、会話が成り立ちません。娘さんに聞いてみると、お父様はご自身の名前は言えるのですが、生年月日や自宅住所さえも言えないようで、いわゆる認知症でした。
認知症になると不動産の売却は難しくなります。
今回のように、不動産の所有者であるお父様が認知症で判断能力がない場合、売買契約は無効になることが法律で定められています。また、認知症のお父様の代わりにご家族が不動産の売却を行うこともできません。
なぜかというと、「所有権移転を承認してくれる司法書士がいないので、売却ができないから」です。司法書士は、【本人の意思確認無し】に売却を承認しません。
もしこの様な状態になってしまったら、どうすればいいのでしょうか? それは、成年後見制度を利用しての売却となります。
成年後見制度
ご家族が代理で不動産売却を進めたい場合、成年後見制度を利用すれば売却することができます。しかし、『売却するべきかどうか』については、親族では決定できません。家庭裁判所から選任された、成年後見人の判断になってしまいます。
さらに、家庭裁判所の許可が必要となります。売却の相当性、妥当性、必要性がないと売却の許可がおりません。そのため、成年後見制度を利用すれば不動産売却は可能になりますが、「必ず売却できるわけではない」ということです。
成年後見制度を利用した不動産売買は通常の不動産売買よりも時間と労力を要するため、手続きが大変だと感じる方が多いのではないでしょうか。スムーズに手続きを進めたり、トラブルを防ぐためには、認知症になる前に対策することが大切です。
続いて、いざという時のために認知症になると困ることの一例を見ていきましょう!
認知症になるとできなくなること
―相続の準備ができなくなる
認知症の方が遺言書を作成した場合、その遺言書が無効になる可能性があります。遺言書の有効性は、遺言者本人が遺言を作成する時点で意思能力があったかどうかに基づいて個別に判断されます。特に、法定相続分とは異なる割合で相続させたい場合や、分割しづらい財産が遺産に含まれる場合は、希望通りの遺産分割ができないことがあります。
生前贈与も、財産を贈与する側(贈与者)と受け取る側(受贈者)の間で契約がを結ぶ必要があるため、贈与者に意思能力がなければ無効となります。その結果、生前贈与を利用した相続税の節税対策ができなくなってしまうのです。
―預貯金の引き出しができなくなる
親が認知症になると、ご家族が介護や日常生活のサポートを行うことが多くなりますよね。例えば、食事の準備や家の掃除などの日常的なサポートに加えて、光熱費や生活費など金銭面の管理・サポートも家族が行うケースが大半です。
しかし、認知症の親に代わってご家族が金融機関で生活費を引き出すときに、窓口で事情を説明したことがきっかけとなり、口座が凍結されてしまうことがあります。口座が凍結されると、生活費や介護費用、医療費を引き出すことができなくなってしまうため、金銭面で大きな問題が発生するケースもあります。
事前にできる対策
―家族信託を活用する
家族信託とは、親の財産の管理・処分を信頼できるご家族(受託者)に託す制度です。認知症になると銀行口座が凍結されてしまったり、不動産の売却もできなくなりますが、家族信託を利用すると、ご家族が継続して財産管理できるようになります。
家族信託を行う際の注意点として、【契約書は公正証書で作成したほうが効果的】です。
自分たちで契約書を作成することもできますが、他の相続人が「契約の無効」を主張してくる恐れがあります。トラブルを防ぐためにも「契約した時点では判断能力があったこと」を主張できる公正証書で作成しておくと安心です◎
―生前贈与をする
生前贈与とは、存命中にご家族に財産を譲り渡すことです。
生前贈与の特徴として、贈与者(財産をする方)は【いつ、誰に、どの財産を渡すか】を自分の意思で自由に決めることができます。
また、生前贈与を行うと、受贈者(贈与を受けた方)に贈与税がかかりますが、贈与税には年間110万円の基礎控除(非課税枠)がありますので、生前に少しずつ贈与することで、相続税対策にも効果的です。
―任意後見契約
任意後見制度とは、ご本人の判断能力が十分あるうちに、将来、認知症などで判断能力が低下したときに備えて、自分の財産管理や生活の支援をしてもうらう人をあらかじめ決めておく制度です。
認知症高齢者数は今後も増加するとされていて、厚生労働省の発表によると2040年には584万人にのぼると予測されています。後見人を事前に決めておくことで、成年後見制度のような裁判所の監督が不要になり、家族の負担も軽減することができます。
まとめ
今回の相談者様のように、父母が認知症だとしても、その度合いや状況によっては不動産を売却することが可能です。しかし、認知症と不動産売却の問題は複雑で、スムーズな売却はできません。
認知症対策をしていなかったことで後からご家族が困ってしまうケースはよくあります。ですが、早めの対策と専門家のサポートがあれば解決できます◎
転ばぬ先の不動産カエルに是非、ご相談ください!

